全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%を超え、超高齢社会となった日本では、社会機能の面において求められる要素が多くなり、歯科医療も今まで以上に需要が伸びる分野になると言われています。多くの高齢者が必要とする義歯などを作る歯科技工士にとっても超高齢社会への対応が求められるでしょう。
今回はこのような時代背景のなかで、歯科技工士の将来はどうなっていくかについてまとめました。
日本の高齢化
日本人の平均寿命の1990年~2015年までの推移を見てみると、25年間で男性は4.83歳、女性は5.09歳伸びており、男女ともに80歳を超えています。(男性80.98歳、女性87.14歳:2017年 厚生労働省「簡易生命表」)
長生きできるのは喜ばしいことですが、厚生労働省は“医療や介護に依存しないで自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間の平均”を指す「健康寿命」については、2016年では男性72.14歳、女性74.79歳だったと発表しています。
この、「平均寿命」と「健康寿命」の差を小さくし、寝たきりなどで生活に制限のある期間をなるべく短くしていくことが、老後の生活にとって重要な要素だといえます。
歯科医療や歯科技工士の需要が高まる
食べることは人間が生命を維持するための基本的な営みで、それを可能にするのが丈夫な歯です。健康増進法に基づき策定された「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」においても健康寿命の延伸が目標に掲げられ、「歯・口の健康」についても各年代ごとの達成目標が掲げられています。皆さんも「8020運動」(80歳になっても自分の歯を20本残そう)という活動を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、もし歯を失うことがあっても義歯(入れ歯)を装着すれば機能は維持できます。失った歯を義歯やインプラントなどで代替する治療は今後ますます需要が見込まれ、技工物を作る歯科技工士は超高齢社会には必要不可欠な存在になると言えます。
増える仕事量
インプラント(アゴの骨にチタン製の土台を立て、その上に歯を作る方法)や、口元を美しく見せるための審美歯科なども広く認知されるようになり、技工物の用途や種類も増えつつあります。これら高度な治療も技工物を作成する歯科技工士の技術があってのものなので、歯科技工士の仕事量は今後も増えていくことが見込まれます。
歯科技工士数の不足
仕事量が増加しているのに対し歯科技工士の数は減少傾向にあります。特にこれから業界で中心となる40歳以下の歯科技工士の人数が少ないのが現状です。これは少子化に伴う人口減少や大学進学率の上昇などが理由に挙げられますが、近い将来技工士が不足することが懸念されています。
医療系国家資格である歯科技工士は、資格を取得してしっかりと技術を磨いていけば長く安定して働ける仕事で、経験を積めば独立開業する道も開けています。今の歯科技工士を取り巻く状況は、これから歯科技工士を目指す人にとってはチャンスとも捉えることができるのではないでしょうか。
高齢化社会において歯科医療の需要はさらに高まるもので、歯科技工士の仕事も増加していくことが予想されます。歯科技工士はニーズに応じた技工物を作ることが求められ、技術を向上させながら独立開業などスキルアップしていくことも可能です。
歯科技工士には今後もさらなる活躍が期待されます。