CAD/CAM (computer-aided design/computer-aided manufacturing)とはコンピューターを用いて設計や生産を行う技術です。近年歯科医療でも多用されるようになり、治療や技工作業の効率化だけでなく患者さんへのメリットも出てきています。
CAD/CAMとはいったいどんな技術なのでしょうか。そしてCAD/CAMの導入によって歯科医療はどのように変化していくのでしょうか。
歯科技術におけるCAD/CAMとは
CADとはコンピューターによる設計支援、CAMはコンピューターによる製造支援という意味で、計測装置、設計装置、加工装置の3つから構成されています。
歯科技術におけるCAD/CAMとは、口腔内に装着するクラウンやインレーなどの補綴物をCADやCAMのシステムを用いて設計、作製する技術を指します。従来ほとんど全てを手作業で行ってきた工程にCADやCAMを作組み込むことによって作業の効率化が図られるだけでなく、仕上がり具合のばらつきを防ぎ、さらには今まで利用できなかった素材も使えるようになるなど、技術革新が目覚しい分野です。
1日で白い歯ができあがる、
CAD/CAMを使用した技工物作製の流れ
歯科用CAD/CAM システムを用いた白い歯の被せ物であるハイブリッドレジン冠(CAD/CAM冠)が、2014年より小臼歯(前歯と奥歯の中間ぐらいにある左右上下で計8本ある歯)に対し保険適用となり、そして2017年には条件付きながら下顎第一大臼歯(下の前から6番目の奥歯)が保険適用になりました。これの作製工程を例に見ていきましょう。
まず歯科医院において歯を削ったあと、歯科医師や歯科衛生士が口腔内スキャナーを用いて印象(歯型)やバイト(上下の歯の噛み合わせデータ)を撮影します。そしてそのデータをもとに歯科技工士がCAD/CAM装置を用いて技工物をデザインし削り出します。削り出された技工物は歯科技工士が調整したのち、歯科医師により患者の口腔内にセットされます。この方法により患者は歯を削ったその日のうちに白い歯の被せ物を入れて帰宅することが可能になりました。
注)口腔内スキャナーを用いず、従来のように印象から石膏模型を作製し、その石膏模
型やバイトを歯科技工所へ送ってスキャンしたのち、データをもとにCAD/CAM装置を用いて技工物を製作する方法もあります。この場合は被せ物の完成までに数日かかります。
患者のメリット
・歯の型採りが無くなり肉体的負担や不快感が軽減できます。
・コスト削減や治療時間の短縮がなされるようになりました。
・さらなる技術革新により、矯正や入れ歯など多方面の治療に活用が進んでいます。
CAD/CAMの導入は歯科技工士にも大きなメリットが
今まで匠の世界と言われていた歯科技工にCAD/CAMを導入することにより技術習得にかかる時間を短縮することができ、経験の浅い歯科技工士が製作してもベテランと遜色ないクオリティの技工物ができるようになります。そしていちどデザインしたものはデータとして保存、取り出しができるので、万が一製作途中で失敗があったり、技工物を患者が紛失した場合でも、容易に同じものを再製作することができます。
歯科医療に革新的な技術をもたらしたCAD/CAMは、健康保険の適用分野のさらなる広まりも期待され注目を浴びています。歯科技工士の教育や働き方も今後大きく変化していくことが予測され、これからはCAD/CAMを道具のひとつとして自在に扱える歯科技工士が求められていくことでしょう。
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